歯を長持ちさせるために(TCHについて②)

前回は上下の歯が弱い力で接触していたとしても、それが長時間続いた状態(TCH:上下歯列接触癖)は歯や歯ぐきに悪影響を及ぼすことがあるということをお話ししました。

TCHは普段、無意識のうちに行われていることが多く、自分にその様な習癖があるとはなかなか気付きにくいものです。リラックスした状態で唇を軽く合わせた時、上下の歯はどのようになっているでしょうか。上下の歯は接触していませんか。また上下の歯が接触している場合の方が、楽に感じる、しっくりくるという方は要注意です。

ではどの様にTCHを軽減させていけば良いのでしょうか。まずは自分がTCHの状態にあることに気づくことが大切です。「歯を離す」などと書いた張り紙を目の付く場所に何枚も貼り、上下の歯が接触していないか絶えずチェックしていきましょう。上下の歯が接触していた場合はすぐにリラックスして、歯を離すようにします。これを繰り返しているうちに、張り紙が目に入らなくても上下の歯の接触に気付くようになってきます。

日常生活でストレスや不安を感じていたり、集中して作業をしている時、ふいにスマホをいじったりしている時などは上下の歯が接触した状態になりやすいので注意していきましょう。。

歯を長持ちさせるために(TCHについて①)

ヒトの噛む力は大変、大きく成人では40㎏~60㎏と言われています。おおよそ自分の体重と同じくらいの力がかかっています。

また睡眠中にギリギリと音を立てて歯ぎしりをされる方がいますが、その場合は1本の歯に250㎏の荷重が加わっています。このように大きな力が加わり続けると、歯や歯ぐき、顎関節などに負荷が加わり悪影響を及ぼすのではないかということは容易に想像できると思います。

最近、弱い力で上下の歯が長時間、接触している状態は、歯などに悪影響を及ぼすと言われています。この状態を上下歯列接触癖(TCH:Tooth Contacting Habit)と言います。普段の日常生活では、食事をする時、会話をする時、また何もしていない時でも上下の歯が接触しますが、それは時間になおすと20分位です。

弱い力であってもこれが長時間続き、負荷が積み重なっていくのが問題となるのです。この積み重なった力の総和が、個人の許容できる力の総和を超え過負荷(オーバーロード)となった時、歯、歯ぐき、顎関節などに問題が生じてしまいます。

TCHでは以下の症状が出現したり、症状が悪化してしまうことがあります。

①歯がすり減る

②被せ物や修復物の脱離

③顎関節症

④歯周病の進行(歯の動揺)

⑤歯がしみる

⑥歯にひびが入る(歯根破折)

⑦咬んだ時の違和感

次はTCHの治療について説明します。

 

 

 

 

歯の根っこのひび

今日、私の母の歯を一本、抜きました。

年齢とともに少しずつ歯の本数が減ってきているので、できれば抜きたくなかったのですが・・・。

原因は歯根破折というもので、歯の根っこの部分にひびが入り、根っこが割れてしまったためです。(ほとんどの場合、ひびが縦に入り、抜歯に至ります。)

この歯根破折、神経がある歯とない歯では圧倒的に神経のない歯に起こります。それは神経を抜くことで栄養供給を失い歯が脆くなってしまうこと、また差し歯にするため金属の土台をいれることなどが主な原因です。(この他に歯ぎしりや食いしばりなど咬み合わせに関する習慣も関与してきます。)

歯根破折を起こさないためには歯の神経を抜かないことが非常に大切です。そのためにも虫歯は進行しないうちに手を打つことが必要となってくるのです。

歯の生え換わり

今回は歯の生え換わりについて書きます。

乳歯から永久歯への生え換わりは5~6才頃に始まり、12~13才頃には終了します。(上下合わせて28本の永久歯が生えそろうことになります。)

まず最初に抜けてしまう乳歯は下の真ん中の前歯です。そのメカニズムは、あごの骨の中ある永久歯が歯としての形をととのえつつ、乳歯の根っこに近づき、押してきます。このことによって乳歯の根っこは吸収が進み、短くなってグラグラするようになってくるのです。

よく乳歯の裏側から永久歯が生え始めているのに乳歯はいっこうにグラグラしてこないということがあります。これは乳歯の根っこの吸収が不規則に起こっている場合が多いようです。永久歯が生え始めてきているのは、乳歯を早めに抜いたほうがいいですよという合図と考えてよいでしょう。あまり放置すると永久歯がそれた方向に生えてきますので注意が必要です。

歯の生え換わりは、子供が自分自身で身体の成長を感じ、また貴重な体験をするときでもあります。自分で一生懸命、歯を抜こうとしているときにはぜひ応援してやってください。

後戻り

歯周病を予防し、健康な歯ぐきを維持していくために、歯周ポケット(歯と歯ぐきの隙間)内の歯石やバイオフィルムを除去することは非常に大切です。

ただ、一度、歯石を除去すると二度と歯石が付かないということはありません。時間の経過とともに歯周ポケット内に歯石が付き、細菌が増殖してきます。

それではどの位の期間で後戻りしてしまうのでしょうか?

これまでの研究ではだいたい3カ月位で後戻りするとされています。

ただしこの後戻りしてしまう期間には個人差があり、ブラッシング(セルフケア)が大きく関わってきます。ブラッシングがなかなかゆきとどかない部位の多い方はもっと短期間で後戻りしてしまいます。

よく歯科医院でブラッシング指導を行いますが、これはきちんとしたブラッシングを身につけていないと、いくら歯石やバイオフィルムを除去してもすぐに後戻りを起こしてしまい、その効果を長持ちさせることができないからです。

ご自身で行うセルフケアと歯科医院で行うプロフェッショナルケアをうまく組み合わせ、良好なお口の環境を作っていきましょう。

 

 

 

「歯石が付いてますよ。」

歯科医院に治療に通われた時、「歯石が付いてますよ。」と指摘されたり、また歯科検診で歯石の項目にチェックが付いたりする方がいらっしゃると思います。

歯石が歯周病を進行させるというのはよく知られています。

しかし実際は歯石が直接、歯ぐきに何か悪さをして歯周病が進行するわけではありません。

まず歯垢(プラーク)とは食べかすではなく口腔内細菌の集合体です。そして歯石は歯垢が堆積し、石灰化して硬くなったものです。言わば歯石は死んだ細菌の塊です。

歯石は歯と歯ぐきの隙間(歯周ポケット)において歯根の部分に付きます。そのような状態になると歯根の表面は粗ぞうとなり歯垢が非常に付着しやすくなるのです。この歯石に付着した歯垢(口内細菌の集合体)が歯ぐきに炎症を引き起こし、歯周病を進行させるのです。

どんなにブラッシングを丁寧に行っても、全く歯石が付いていない状態にすることは不可能です。一般的には2~3カ月で歯石が付着してくると言われています。歯周病を予防していくにはこまめに歯石を除去していくことが大切です。

バイオフィルムって知ってますか?

今日6月4日から「歯と口の衛生週間」が始まります。

そこで今日はお口の中のことについて書きます。

歯周病はプラーク(歯垢)や歯石が原因となり、歯周組織を破壊する細菌感染症であることはよく知られています。

それではバイオフィルムという言葉をご存知でしょうか?

バイオフィルムとは細菌の塊であるプラークが成熟し、強固な薄い膜状になっているものをさします。

よく例えられるのは浴槽や台所のヌメリです。

このヌメリのような状態で歯と歯ぐきの隙間(歯周ポケット)に付着しています。

バイオフィルムは細菌の集合体であるため、毒素を放出し、歯周病を進行させます。

このバイオフィルムが厄介なのは、舌で歯の表面を触ってもわかりませんし、ブラッシングではなかなか除去できない点にあります。

どんなに丁寧にブラッシングをしても、誰にでもバイオフィルムが付着していると考えてよいでしょう。

現在でもバイオフィルムに利く薬などは開発されていませんので、歯科医院などで振動を与える機械を使って丹念に除去していくしかありません。

時間のある時にでも歯ぐきのケアを考えてみてはいかがでしょうか。

フッ化物洗口の安全性

今日の新潟市の最高気温は0℃。

とても寒い日が続いています。

例年と比べると、積雪量はそれほど変わらないと思いますが、冷え込む日が多いと感じているのは私だけでしょうか。

路面も凍っていたりするので車の運転には気をつけたいものです。

ところで先日、私が園医をしている金津保育園の園長先生から「保育園・幼稚園フッ化物洗口マニュアル」という冊子を届けていただきました。

その中に書いてあるフッ化物洗口の安全性について紹介したいと思います。

現在、秋葉区の保育園、幼稚園で行われているフッ化物洗口(フッ素洗口)は週2回法が多いですが、うがいの後にお口の中に残るフッ化物の量は1日当たり約0.2mgです。

これはお茶1~2杯に含まれるフッ化物の量と同じだそうです。

ですから仮に間違って全部飲みこんだとしても全く心配のない量です。

それではお茶を利用して虫歯予防ができるのでしょうか?

フッ化物洗口は、フッ化物イオンを歯の表面に作用させ歯質を強くする予防法であり、フッ化物イオンの濃度が重要です。

お茶には比較的多くのフッ化物が含まれていますが、フッ化物イオンとして溶けている濃度が低いので、虫歯予防に十分効果を期待することはできないとのことです。

 

虫歯のCOについて

「ちょっと歯が黒っぽくなっているんですけど、これって虫歯ですか?」と聞かれることがあります。

よく診査してみると確かに黒くなっていますが、実質欠損はないようです。

これは虫歯の判断基準でCO(シーオー、Questionable Caries under Observation)と呼ばれます。

正式な基準は、

「視診にて明らかなう窩は確認できないが、う触の初期病変の徴候(白濁、白斑、褐色斑)が認められ、その状態を経時的に注意深く観察する必要のある歯」

ということになります。

私もCOと判断して、特に処置はせず、経過観察を行う場合がよくあります。

ただここで注意してほしいのは、これまでと同じように過ごし、経過を観察するということではありません。

自分の歯が初期のう触病変を呈していることを認識し、食習慣やブラッシングなどの生活習慣を見直すということが大切なのです。

これは人任せではなく、自らの力で健康や豊かな人生を手に入れるというヘルスプロモーションの概念と通じるものがあります。

歯は健康に大きく関わっています。

今一度、ご自身のお口の中を見つめ直してみてはいかがでしょうか。

フッ素の効果

先日、私が園医を務める保育園へ歯科健診に行ってまいりました。

実際、健診をしてみると、カリエスフリー(虫歯が1本もない状態)の子供も多く、とても良い状態だと思いました。

この保育園では、4年ほど前から週2回のフッ素洗口を取り入れており、その効果が出てきているとのことでした。

フッ素によって歯質が強化されたり、細菌による酸産生を抑制するため、虫歯予防に効果があることはよく知られています。

虫歯予防の方法はたくさんあるかも知れませんが、フッ素を利用することは煩雑な手間を必要とせず小児も簡単に取り組めること、比較的安価に導入することができるということが利点だと思います。

また保育園や学校などの機関では継続的に行うのでその効果も大きいと思われます。

今後もフッ素洗口を続け、日々の生活習慣としてお口の健康を意識していってほしいです。